セイコーの画期的自動巻き機構「マジックレバー」【セイコー プロスペックス マリーンマスタープロフェッショナル SBDX014】

2022年01月21日

本日も当ブログをご覧くださいましてありがとうございます。
今回はこちらの時計を紹介いたします。

「SEIKO セイコー プロスペックス マリーンマスタープロフェッショナル SBDX014」

セイコーと言えば超高精度を誇る「9Fクォーツ」や、機械式とクォーツ式のハイブリッド「スプリングドライブ」等が有名ですが、優れた両方向自動巻き機構である「マジックレバー」はご存じでしょうか。

そもそも両方向自動巻きの巻上げ方式には、大きく分けて3つの構造がございます。
最もメジャーなのが「リバーサー式」です。

切り替え車を使ってローターの左右回転を一方向に整える方式で、大量生産向きで巻上げ効率も高いため、ロレックスやETA等、多くのムーブメントに採用されています。

デメリットは、経年劣化で巻上げ効率が落ちやすいという点で、オーバーホールの際にリバーサーの交換が必要になる場合が多いです。

「ROLEX ロレックス デイトナ 116500LN ホワイト」

「スイッチングロッカー式」はランゲ&ゾーネやオーデマピゲCal.3120等に採用されている巻上げ方式で、左右に首を振る歯車を使ってゼンマイを巻上げます。

省スペースで耐久性も高いため、薄型ムーブメントを製造する高級ブランドに好まれていましたが、現在ではスイッチングロッカーを採用するメーカーは減っており、オーデマピゲも近年のムーブメントではリバーサー式を採用しています。

スイッチングロッカー式のデメリットは巻上げ効率があまり良くないという点で、22金製等の重いローターが必要になるため、高級機でないと採用が難しいとされています。

「オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク 15400ST.OO.1220ST.03」

「ラチェット式」は、爪を使ってゼンマイを巻上げる方式で、ロンジンやパテックフィリップの一部ムーブメントでも採用されており、IWCのペラトン自動巻きは1950年頃から70年以上基本設計を変えずに使用されています。

巻上げ効率は高いですが、コストがかかるうえスペースが必要なため薄く小さなムーブメントに搭載できないというデメリットがありました。

「IWC ポルトギーゼ オートマティック 7DAYS IW500704」

セイコーがラチェット式自動巻きに使用する「マジックレバー」は、部品数が極端に少なく構造もシンプルなためコストやスペースのデメリットを解消しており、油切れや経年劣化にも強い非常に優れた設計をしておりました。

マジックレバーは上画像のように、ローターの回転に合わせて、爪が歯車を引っ掛ける・あるいは爪が歯車を押し出すため、ローターがどちらに回転してもゼンマイは一方向のみに巻上げられるという仕組みです。

この優れた設計は1950年代後半からセイコーの自動巻きムーブメントに用いられてきましたが、1990年代頃から急速に注目を集めています。

最近ではカルティエ、ピアジェ、パネライなどといったリシュモングループのメーカーを中心にセイコーのマジックレバーと同様の機構を採用しており、両方向自動巻きの主流は「リバーサー式」から「ラチェット式」へと変化する可能性もあると言われているようです。

スプリングドライブの凄さに隠れがちですが、セイコーの機械式時計にはこのようにスイスの一流時計メーカーに大きく影響を与えるほどの機構が備えられています。(メカニカルハイビートとして知られる9S85系等はリバーサー式になっており、セイコーでもラチェット式とリバーサー式が混在しています。)
セイコーには近年実用化されたデュアルインパルス脱進機などもあり、セイコーの機械式時計から目が離せません。

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