デイトナファンこそ知っておきたい”屋根裏の救世主”とは

2025年12月12日

もし一人の技師が、あのムーブメントを屋根裏に隠していなかったら。
後のデイトナは、今とは少し違った姿になっていたかもしれません。

今やロレックスを代表するアイコンとなったデイトナにも、そんな背景を持つ“知られざる物語”があることをご存じでしょうか。

今回は、ちょっと特別なこちらのデイトナにまつわる、時計好きの間ではよく知られたエピソードをご紹介していきます。

ROLEX ロレックス デイトナ エルプリメロ 16520 ブラック

ROLEX ロレックス デイトナ エルプリメロ 16520 ブラック

1988年から2000年にかけて製造された本作は、デイトナとして初めて自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載したモデル。
その心臓部となるのが、今回のテーマである“エル・プリメロ”を基にした Cal.4030 です。

エルプリメロ、ムーブメント画像

エル・プリメロといえば、1969年に誕生したゼニスを象徴する自動巻きクロノグラフムーブメント。
最大の特徴は、毎時36,000振動というハイビート設計。精度を追求した技術の結晶です。

しかし、ロレックスはあえてこれを 毎時28,800振動 に変更しました。
精度を落としたわけではありません。より大きなテンプとマイクロステラナットを採用し、耐久性と精度の両立を図ったのが Cal.4030 なのです。


■エル・プリメロが消えるはずだった日

エル・プリメロ誕生の1969年は、機械式時計の危機「クォーツショック」の真っ只中。
ゼニス社も例外ではなく、機械式時計の生産を完全にやめ、クォーツへ移行する決断を下しました。

工房では、機械式時計の製造に必要な治具、図面、パーツがすべて廃棄されようとしていました。

それでもエル・プリメロは今日まで存続しています。
では、この危機をどうやって乗り越えたのでしょうか。


■すべてを救った“屋根裏部屋”

答えは、ひとりの技師シャルル・ベルモ氏の行動にありました。
彼は約6か月間、毎晩こっそりと設計図や部品、工具一式を屋根裏へ運び、隠したのです。

「いつか必ず機械式時計は復活する。エル・プリメロはスイスの文化遺産だ。」

その強い信念だけを頼りに、彼はこのムーブメントの命をつなぎました。

現在、スイスのル・ロックルに佇むこちらの工房は一般見学が可能で、当時エル・プリメロ復活に使われた治具も展示されています。
筆者である私自身も、いつか訪れてみたいと思う特別な場所です。


■一本のムーブメントが変えたデイトナの歴史

もしベルモ氏がエル・プリメロを屋根裏に隠していなければ、ロレックスが後にベースとして採用することもなく、自動巻きデイトナの歴史は大きく違うものになっていたでしょう。

技術者の「守りたい」という想いと、ブランドの選択の積み重ね。
その結果が、今日のデイトナというアイコンを形作っています。
一本の時計の裏には、これほどの情熱が宿っているのです。


■スペック紹介

ではスペックを簡単にご紹介します。

こちらの個体は1996年頃生産の個体で、ケース径は40mm。ケース厚は12㎜です。

防水性能は10気圧防水、パワーリザーブは52時間です。

インダイヤルに若干の焼けが見られる状態の、希少な個体です。


■まとめ

いかがでしたでしょうか。

デイトナの裏に隠された、ムーブメントをめぐる物語。

このエピソードを通して、更なる魅力を皆様に堪能していただければ幸いです。


▼今回ご紹介した腕時計

ROLEX ロレックス デイトナ エルプリメロ 16520 ブラック


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最後までお付き合いいただきありがとうございます。

それでは、素敵な時計ライフをお過ごしください。

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