もし一人の技師が、あのムーブメントを屋根裏に隠していなかったら。
後のデイトナは、今とは少し違った姿になっていたかもしれません。
今やロレックスを代表するアイコンとなったデイトナにも、そんな背景を持つ“知られざる物語”があることをご存じでしょうか。
今回は、ちょっと特別なこちらのデイトナにまつわる、時計好きの間ではよく知られたエピソードをご紹介していきます。
ROLEX ロレックス デイトナ エルプリメロ 16520 ブラック
1988年から2000年にかけて製造された本作は、デイトナとして初めて自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載したモデル。
その心臓部となるのが、今回のテーマである“エル・プリメロ”を基にした Cal.4030 です。
エル・プリメロといえば、1969年に誕生したゼニスを象徴する自動巻きクロノグラフムーブメント。
最大の特徴は、毎時36,000振動というハイビート設計。精度を追求した技術の結晶です。
しかし、ロレックスはあえてこれを 毎時28,800振動 に変更しました。
精度を落としたわけではありません。より大きなテンプとマイクロステラナットを採用し、耐久性と精度の両立を図ったのが Cal.4030 なのです。
■エル・プリメロが消えるはずだった日
エル・プリメロ誕生の1969年は、機械式時計の危機「クォーツショック」の真っ只中。
ゼニス社も例外ではなく、機械式時計の生産を完全にやめ、クォーツへ移行する決断を下しました。
工房では、機械式時計の製造に必要な治具、図面、パーツがすべて廃棄されようとしていました。
それでもエル・プリメロは今日まで存続しています。
では、この危機をどうやって乗り越えたのでしょうか。
■すべてを救った“屋根裏部屋”
答えは、ひとりの技師シャルル・ベルモ氏の行動にありました。
彼は約6か月間、毎晩こっそりと設計図や部品、工具一式を屋根裏へ運び、隠したのです。
「いつか必ず機械式時計は復活する。エル・プリメロはスイスの文化遺産だ。」
その強い信念だけを頼りに、彼はこのムーブメントの命をつなぎました。
現在、スイスのル・ロックルに佇むこちらの工房は一般見学が可能で、当時エル・プリメロ復活に使われた治具も展示されています。
筆者である私自身も、いつか訪れてみたいと思う特別な場所です。
■一本のムーブメントが変えたデイトナの歴史
もしベルモ氏がエル・プリメロを屋根裏に隠していなければ、ロレックスが後にベースとして採用することもなく、自動巻きデイトナの歴史は大きく違うものになっていたでしょう。
技術者の「守りたい」という想いと、ブランドの選択の積み重ね。
その結果が、今日のデイトナというアイコンを形作っています。
一本の時計の裏には、これほどの情熱が宿っているのです。
■スペック紹介
ではスペックを簡単にご紹介します。
こちらの個体は1996年頃生産の個体で、ケース径は40mm。ケース厚は12㎜です。
防水性能は10気圧防水、パワーリザーブは52時間です。
インダイヤルに若干の焼けが見られる状態の、希少な個体です。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
デイトナの裏に隠された、ムーブメントをめぐる物語。
このエピソードを通して、更なる魅力を皆様に堪能していただければ幸いです。
▼今回ご紹介した腕時計
ROLEX ロレックス デイトナ エルプリメロ 16520 ブラック
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最後までお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、素敵な時計ライフをお過ごしください。















