1969年のクォーツショック後、1990年代に勢いを取り戻し、その後、現行のセイコーアストロンのようなGPSを利用したより精度の高い腕時計や当店が扱っているVELDTのようなスマートウォッチが出てきても依然として高い人気がある機械式時計。
精度は現在でも1日で数秒~十数秒の誤差(クォーツは月で数秒~十数秒の差)が出て、更には3~5年に一度オーバーホールが必要という面倒があるにも関わらず、機械式時計には計り知れない魅力があるのは当店のサイトをご確認頂いている方にとっては御存知の通りですね。
この機械式時計、昔も今もゼンマイや歯車によって動いていますが、昔からなにも変わっていないかと言うと実はそんなことはありません。
ケースには航空機で使われるような最先端素材が使われることも多くありますが、ムーブメントにも最先端技術が使われています。
その一つがシリコン(ケイ素)素材です。
半導体部品などに使われることも多い素材で、軽量かつ硬く、金属ではないため磁気帯びすることもない、腐食もしないし温度変化にも影響を受けない。そして注油も必要無いというムーブメントにとって素晴らしい特性を思っています。
このシリコン素材を率先して開発、使用してきたブランドは複数あります。
その一つがパテック・フィリップです。
アクアノート5167やノーチラス5711のムーブメントCal.324SCやパーペチュアルカレンダー5140の240Qなどパテック・フィリップの多くのモデルにシリコン素材ベースした「シリンバー」を使ったスピロマックスヒゲゼンマイを使用しています。
ブレゲでも伝統的なデザインを踏襲している「クラシック」コレクションに使用しています。
「ブレゲ クラシックコレクション」
現在のラインナップではガンギ車やヒゲゼンマイ、アンクルなど多くのパーツに使用しています。
またオメガの多くのモデルにシリコン(Si14)製ヒゲゼンマイを搭載しています。
シーマスター アクアテラの新コレクション「オメガ シーマスター アクアテラ マスターコーアクシャル」や007 スペクターでの使用で話題になった「オメガ シーマスター300 マスターコーアクシャル」、スピードマスターの1stモデルを現代的に復刻した「オメガ スピードマスター ’57 」など、新しいコレクションに積極的に採用しています。
Si14製ヒゲゼンマイを採用しているシースルーバックのモデルでは、裏ぶたよりテンワに刻印されている「Si14」の表記を見ることが出来ます。
ゼニスでは代表的ムーブメント「エルプリメロ」のガンギ車に使用。
ゼニス エル・プリメロ シノプシス 03.2170.4613/02.C713
文字盤9時位置に窓のあるモデルではそのガンギ車を表から見ることもできます。
また以前西山のブログでも紹介したロレックスディフュージョンブランドでありながら別ブランドの道を歩むチュードルが開発した自社製ムーブメント「MT5612」でもシリコン製ヒゲゼンマイを採用しています。
チュードル ぺラゴス ブルー TIブレス 25600TB
この様に多くのブランドが採用しており、今後も広がりを見せていくのでは無いでしょうか。