世界3大時計ブランドのなかにあって頭一つ抜きんでた存在が『パテック・フィリップ』である事は多くの方が認めるところでしょう。
【カラトラバ】【ゴンドーロ】などのドレスタイプの時計のみでなく【ノーチラス】【アクアノート】といったスポーツウォッチも非常人気が高くドレス・スポーツ両面で隙の無い商品構成となっておりどれもが人気のモデルです。
このところスポーツモデルの高騰でノーチラスやアクアノートに注目が集まりがちですがPATEK PHLIPPEの本懐は複雑時計にあるのです。
パテック・フィリップはどんな複雑な機構であれ操作性を重視し出来る限り簡単に操作が可能な設計をし、可能な限り機械的なトラブルがおきない様に設計・製作しており、あらゆる面で所有者を満たしてくれる時計づくりを続けております。
「隙の無いコレクション構成」、どんなに古いモデルでも必ず修復する「永久修理」。
「気持ちを刻み込んで、その時計は受け継がれる。父から子へ世代から世代ヘ」といったキャッチコピーからも読み取れるように資産性の高さもトップブランドと言われる理由。
そんな頂上ブランドであるパテック・フリップを代表するグランドコンプリケーションといえば【パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ】【ミニット・リピーター】が代表各でしょうか。
パテック・フィリップと言えばこのモデルともいえる【永久カレンダー搭載クロノグラフ】
その歴史は長く1941年から始まっております。
本日は各モデルの特徴を簡単ではございますがご説明してまいります。
【1941年~1951年まで製作された初代Ref.1518】
・ケースサイズ35㎜
・世界で初めて永久カレンダーとクロノグラフを一つの時計に搭載した腕時計
・プッシャーは角型でダイヤルデザインはタキメーター表示があり、アラビア数字のインデックス、針はリーフ針を採用している
・ベースムーヴメントはバルジュー社製クロノグラフ(Cal.23VZ)
・10年で281本生産されたとされており、ほとんどがイエローゴールドケース
ローズゴールドケースの個体はその内55本とされており、その中でも特に希少とされている個体がピンク文字盤で9本のみ存在するとされている
更にステンレスケースの個体に至っては4本のみ確認されており2016年のオークションでは当時12億円もの金額で落札されたのは記憶に新しい
【1950年~1985年まで製作されたRef.2499】
・35年と制作期間は長いが349本のみと個体数が少ない非常に少ない
・ケースサイズ37.5㎜
・こちらも1518に引き続きベースムーヴにはバルジュー社製クロノグラフを採用
・外装の特徴から4つの世代に分別される
「第1世代 プッシャーが角形であるのが第1世代最大の特徴。 ダイヤルはタキメーター表示があり、アラビア数字のインデックス、 針の形状はリーフ針」
「第2世代 プッシャーが丸形となりこれ以降は全て丸形のプッシャーなる。ダイヤルデザインは第一世代と同じタキメーター表示にアラビア数字のインデックスとなっており、針がドフィーヌ針へと変更された」
「第3世代 ダイヤルからタキメーター表示がなくなりミニッツ・サークルのみとなるアラビア数字のインデックスぁらバトン型インデックスとなる」
「第4世代 ダイヤルデザインは第3世代と同じだがリファレンスがRef.2499/100となりプラスティック風防からサファイアクリスタル風防へ変更された為ベゼルに高さがある」
※上記はベースと考えられている組み合わせであり、いずれの世代も特注品が存在針の形状やインデックスの仕様など違う組み合わせも存在する
・Ref.2499が生産終了となった後に記念モデルとして僅か2本のみプラチナケースでつくられた個体(エリック・クラプトンが所有していた)に至っては2012年のオークションで当時としては驚愕の約3億円もの値がついた
・2018年には2499としては1本のみとなる(アスプレイというロンドンの販売店のダブルネーム)個体が約4.4億円で落札され上述したプラチナの持つ「Ref.2499」としての最高値記録を塗り替えた
【1986年~2004年まで製作されたRef.3970】
・先代2499より1.5㎜ケースサイズを小さくした36㎜ケース、丸形プッシャーとクラシックなディテールをもつ
・タキメーターは無くすっきりとしたダイヤルデザイン
・ヌーベル・レマニア製(Cal.27-70)ベースムーヴメントを採用したモデル
※画像:Cal.27-70Q
・ムーヴメントの変更により新たに閏年表示と24時間表示が追加された
・ケースのつくりで大きく分けると3シリーズに分けて呼ばれている
↓「1stシリーズ 初期製造のみケースバックがスナップバック式で100本程度の生産と言われている」
「2ndシリーズ 裏蓋がねじ込み式に変更された」
「3rdシリーズ リフレンスが3970Eへと変更されスケルトンバックに仕様変更された。ねじ込み式の裏蓋がセットになる。針がリーフ針からバトン型に変更されており各シリーズのなかで最も流通量の多いシリーズ」
※EはETANCHEとされフランス語で防水の意味
※画像:3rdシリーズであるRef.3970EG未開封時の画像
裏蓋が付属しているのがわかる
・2ndシリーズが世に出された後ほぼ同時期に3971というレファレンスの同モデルも制作されている。これはシースルーバックとなりスナップバック式の裏蓋も付属している
・18年と比較的長い期間制作され愛されたモデル
36㎜のコロンとしたサイズ感や後発である5970や5270とは違ったクラシックな雰囲気が人気のモデルであり今でもコアなファンの多いシリーズである
・ケース素材はR(RG)・G(WG)・J(YG)・P(PT)とあり文字盤は基本的にバトン型インデックスだが特別な顧客のオーダーなどによりアラビア数字や様なバリエーションが存在する
【2004年~2010年まで製作されたRef.5970】
・ケースサイズ40㎜と前作から4㎜拡大し現代的なサイズ感となった
・角型のクロノグラフプッシャー・幅広のウィングレットと呼ばれるボリュームのあるラグの形状とコンケープ(反り返った)されたベゼルが特徴
・タキメーターを備えたダイヤル・美しいリーフ針が特徴的
※画像:素晴らしいダイヤルデザイン
見事な仕上げの時分針
・他社製ムーヴメント(レマニア製Cal27-70)を搭載した最後の永久カレンダークロノグラフモデルとして歴史的な観点、クラシックかつモダンなデザインの両面から評価の高いモデル
・ケース素材はR(RG)・G(WG)・J(イエローゴールド)P(プラチナ)があり、その中でもJは2008年から1年と生産期間が少ない為希少
・ブレゲインデックス仕様などクラプトンの特注品とされる個体はあまりにも有名であり、これまでいくつかの個体がオークションで出品され話題となっており、他にも特別な顧客がオーダーしたとされる個体がいくつか存在するがどれも非常に高額であり実物を目にすることも難しい時計といえる
【2011年~現在も製作されているRef.5270】
・5970から1㎜サイズアップし41㎜ケースとなる
・スクエア型のプッシャーやウィングレットラグ、リーフ針など前作からデザインのベースは踏襲されている
・G(ホワイトゴールド)のシルバーダイヤルは3つのバリエーションが存在する
↓「5270G-001 ダイヤル外周がレイルウェイ表示で全ての針は黒焼き」
「5270G-013 ダイヤル外周がタキメーター表示に変更された
これにより6時が膨らんだ様に見える事により(舌)の様な形になる
針も黒焼されていないものに変更された」
「5270G-018 更にタキメーターのデザイン変更がされたインデックスの長さが5270G-013よりも短くなりタキメーターの印字が変更され(舌)のように見えるデザインで無くなる
インダイヤル(秒針・積算計・日付)の針もリーフ型から変更され細い針へ変更された」
・ホワイトゴールドケースのブルーダイヤルも上記と同じように2種類存在する
↓「5270G-014 シルバーダイヤルの5270G-013同様に(舌)の様な形でインダイヤルの針はリーフ針で形成されている」
「5270G-019 こちらもシルバーダイヤルの5270G-018と同じ変更がなされている」
・PATEK PHILIPPEの永久カレンダークロノグラフとしては初の完全自社製ムーヴメント(Cal. CH29-535 PS Q).搭載モデル
※画像:Cal29-535PS Q
・自社製ムーヴメントへの変更によりハイビートとなり、ハック機能が追加されデイ・ナイト表示機能も追加
閏年表示もこれまでと違い丸い表示窓を設けている
全体の表示が読み取り易くなり視認性が向上した
※画像:4時-5時位置にある〇が閏年表示
7時-8時位置の〇がデイ・ナイト表示
・ダイヤルデザインはベースムーヴであるクロノグラフの変更により秒針と積算計の位置が若干下に下がった
これによりダブルギッシェの曜日・月の表示が大きくなり視認性の向上が図られた
※画像:曜日・月の表示窓であるダブルギッシェ
・これまでカタログモデルには存在せず限られた顧客の特注でしか存在しなかったブルー文字盤・サーモン文字盤などがレギュラーモデルとして展開している点も興味深い
初代モデルから現行モデルを駆け足ですが簡単にご説明してまいりました。
これまでの歴代モデルで共通している点としてムーヴメントは古典的な手巻のコラムホイール式クロノグラフに永久カレンダーを組みこんでおり、ダイヤルデザインは左右対称で12時位置の月・曜日表示のダブルギッシェ、6時位置にはムーンフェイズとその外周に日付表示がありどのモデルも美しい顔つきをしているという事です。
初代モデルから基本デザインを継承し続け、その時代を代表するモデルとして製作され続けているのです。
オークションハウスでの高額な取引実績においてパテック・フィリップの永久カレンダークロノグラフが常連となっており今後もその傾向は強くみられるはず。
現実的に入手を考えた場合3970.5970.5270あたりに絞られると思います。
パーペチュアルカレンダークロノグラフはもとから数が非常に限られたモデルの為、
3970や5970といった既に生産終了しているモデルは年々目にする機会が少なくなっており個人的にも非常にお勧めしたいモデルです。
PATEK PHILIPPEの真骨頂であるグランドコンプリケーションをお手に取ってご覧ください。