突然ですが、皆様は機械式のムーブメントを見て、美しく配置された赤い石「穴石」に目を奪われた事はありませんか?
穴石は、ムーブメントの地板や受け板にはめ込んで歯車の真軸を上下で支え、部品間の摩擦から保護する石(人工ルビー)のこと。
軸の入る中央部分は半球状に窪んでいて、スムーズな動作と磨耗防止のための油溜まりの機能をもっています。
現在その基準は曖昧になっていますが、かつて高級機とそれ以外では穴石の色と造形が明確に分けられていました。
例えば、1890年頃のオーデマ・ピゲでは時計の品質を4等級に分けていて、その基準の一つが穴石だったそうです。
最上級(エクストラ)は、穴石が濃い赤色、均衡の取れたサイズである。
等級が一つ下がるIの穴石は、高品質だがエクストラに比べて赤色が淡い。
等級IIは良質である。
等級IIIは良質だが、組み込まれた数が少ない。
上記内容から考えると、濃い赤色の穴石が組み込まれ、形が複雑な時計程かつては高級機と呼ばれていて、色がピンクに近づき、形がシンプルになるほど実用機の色合いが濃い物だったということが分かります。
また、穴石の形状は一種類ではなく、穴の内側面を丸く加工したオリーベや、上面をドーム上に加工したミ・グラス等、複雑な加工が施されている物ほど高級品だと言われていました。
ここで現在の商品(ムーブメント)をいくつかを見てみましょう。
【オフィチーネ パネライ ラジオミール オロビアンコ 3days PAM00376】
【ジャガー・ルクルト マスター 8DAYS パーペチュアル 40 Q1618420】
穴石の上面がフラットで、油溜まりの窪みを比較的大きめに取るのがジャガー・ルクルトの特徴です。
【パテック・フィリップ グランド コンプリケーション 永久カレンダークロノグラフ 5970P-001】
【ランゲ&ゾーネ ランゲ ダブルスプリット バゲットダイヤベゼル Ref.824.035/LS4042ZP】
(※写真と実際の商品は、色の見え方が異なる場合がございます)
ランゲ&ゾーネは、穴石の固定に金属の枠「シャトン」を使用し、それぞれのシャトンをネジ留めするという19世紀の手法を現在も採用しています。
昔は穴の加工精度が悪かったため、穴石の周囲に貴金属製のシャトンを被せて穴に押し込む必要がありましたが、工作精度が高まった現在は、ムーブメントを立体的に見せるための装飾手法の一つとして行われています。
穴石一つをとっても、時計それぞれの個性が伺えます。
実際に店頭でご覧頂き、是非その違いを見比べてみて下さい。
お客様のご来店を心よりお待ちしております。